平日の昼間家にいると、いろいろな人がやってくる。
我が家にはインターホンのような洒落た物はついてないので、誰かが来ると、そーっと身を潜めて居留守を使うか、玄関を開けるしか選択肢がない。
リビングでお昼ご飯を食べていると、スーツを来た若い男の人がうろうろしているのが目に入った。食事中だし一瞬隠れようと思ったが、目と目が合ってしまい、居留守は使えなくなってしまった。仕方ないので、ドンドン叩くドアに向かって「はぁ〜い」と言って玄関に向かった。
最近はコウがいるので、コウを理由にドアを少しだけあけて、いかにも“犬が出て行っちゃうからドアが開けられないんです”というオーラを出し、「ごめんなさい。ちょっと手が放せないので」と言って帰っていただくことが多い。便利な犬である。
その日もいつもと同様、コウが喜んで玄関に飛び出して行ったので、コウの体を抑えつけながらドアを少しあけた。
すると、まぁ、なんと、久しぶりにみるいい男ではないか。
背が高くてびしっとスーツを着こなし、芸能人かモデルじゃないかと思うぐらいのイケメンだった。私は、無意識のうちに「すいません。犬が出て行っちゃうので、ドア開けてもらっていいですか?」なんて、コウを理由にして、いつもとまったく逆で、家に彼を招きいれてしまったのだ。
しばらくぽーっとしながら彼の顔を見ていたと思う。すると、彼がなにやらセールストークをはじめた。どうやら近所にチェーン店のレストランができるらしく、あらかじめチケットを3700円で買っておくと、4000円分の料理が食べられる、というものらしかった。
私は、そのレストランにはまったく興味がなかったが、彼ともうちょっと話をしてみたいと思って、質問をしてみた。
「そのチケットはお店で買えないんですか?」と。
本当にお客様の為の割引だったらお店で配ればそれでよい。が、彼は「いえ、地域の方だけにサービスさせていただきたいんです。なのでご近所を回らせていただいています」と、いかした顔でもっともらしく応えた。
私は、その時、彼がイケメンであるがゆえに、なんだかすごいインチキに思えてしまった。“この人、この顔を武器にしていろんな女の子と遊んでるんだろうなぁ”などと関係ないことを思ったりして。
コウはすっかり彼になついてしまって、彼に飛びついている。
彼は「毛抜けないですか?」と言った。“おいおい、自分のスーツ気にしてるのかい?”ますます嫌悪感が走った。
そう思ってしまうと、もう彼に用事はない。
さて、どうやって帰っていただくかだ。
私は一瞬考えて、「今、お金が全然ない」と言った。
し〜んとした家に私以外の誰もいないことは彼にもわかったのだろう。
すると彼は「あ〜・・・、そうですかぁ。お姉さん、銀行いったりしませんか」だって。。
私は、一層彼の顔が醜く見え、「今日はどこにも出かけないから、ごめんなさい。コウ、こっちに来なさい」と言って“もう帰ってオーラ”を出しまくった。彼は私の変貌ぶりに怪訝な顔をしながら「お邪魔しました」と帰っていった。
彼を最初家に招きいれた時は、「やっぱり顔がいいと仕事でも得することいっぱいあるんだろうなぁ」と思っていたが、彼が帰った後は「もっと貧相なタイプだったら買っちゃったかもしれないなぁ」とまったく逆のことを思っていた。
彼にとってはとんだ災難だっただろう。
時間を取られた上に、一円の利益も上がらなかったのだから・・・。
ごめんね。
男は顔じゃない。
○○○なのだ。
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