2006年05月03日

二人暮し

先月から、母と私の二人暮しが始まった。

私がまだ子供だった頃、この家には、祖母、両親、姉、弟、そして私に犬、の6人+一匹の大所帯が住んでいた。だが、姉が出て行き、祖母が亡くなり、弟が出て行って、両親と私の3人+一匹の暮らしが始まったのである。私は、この家はしばらくこの構成が続くのだろうとばかり思っていたが、犬がいなくなり、そして父が出て行き、母と私の二人暮しになってしまったのだ。

父は認知症を患って、現在入院中である。

父は、時々電気を消し忘れたり、ヒーターを消し忘れたりすることがあったものの、そのくらいは私もしょっちゅうすることであり、大した問題ではないと思っていたのだが、次第に父の奇行は増えていったのである。

ある日、母と買い物を終えて帰宅すると、玄関に父がうずくまって倒れていた。私は驚いて、父に「どうしたの!?大丈夫なの!?」と問いかけた。父は、意識があり目も開いていて私の問いに応えたが、自力で起き上がることがどうやらできないようだった。

父の周りにはいろいろなものが散乱していた。孫の写真があったり、ゴミ袋が大量に散らかっていたり…。明らかに、そこへ倒れこむ前にいつもと違う行動をしていたのが見て取れたのである。

私が手を貸し、やっとの思いで父を立たせると、彼の体はまだふらふらしていた。足元がおぼつかない。階段が上がれなかった。急遽、母と私で2階の父の部屋から布団一式をリビングに運び、父をそこへ寝かせることにした。それから父は、死んだように次の朝まで一度も目を覚ますことはなかったのである。

翌朝、父は目覚めると、いつもと変わらない様子で私達の問いに応えるのだが、昨日の出来事を一切覚えていなかった。そして、その日は、お風呂に二度入ろうとした。明らかにおかしい。。

入ったばかりのお風呂にまた入ろうとする。私が「さっき入ったでしょう?」というと、納得のいかない顔をしながら、自分の部屋に戻っていった。だが、次の日もまた父はお風呂に何度も入ろうとしたのである…。

そのうち、父はジャージャー目の前で流れている水道を止めることができなくなった。あれだけすごい勢いで水道が目の前で出ているのである。だが、父は蛇口をひねることなくその場を去ってしまうのだ。シャワーも同じだった。最後に父がお風呂に入った日は、翌朝までシャワーが出しっぱなしになるようになった。

そんな父を見て、母は、どうしたらいいのかパニックに陥った。
私は、とりあえず、私の主治医にメールで相談してみることにした。先生は、専門外かもしれない。だが、私の頭には先生に相談する以外思いつかなかったのである。

先生は当日中にメールの返信をくれた。
「お父様の容態が心配なので、予約をすぐ入れてください」と。
私は、ほっとし、母に説明し、父を病院へ連れて行くことになったのである。

私が通院している病院は、入院施設があり、入院患者をよく目にするが、皆仲が良く、穏やかな顔をしていた。私は、ここでなら父を安心して診てもらえる、そう思ったのだった。

簡単な問診をした後、脳波の検査をした。
「脳の働きが正常値に比べて遅すぎる」先生の診断だった。
原因が何なのか、詳しく、経過とともに検査をしていきたいので入院するよういわれ、父自身何が起きてるのかわからない状態で、入院することになったのである。

その時点では、この先私達の生活がどのように変わっていくのかなんて、考えもしなかったが、実際父が入院し、面会に行き、明らかに以前の父とは違うその様子を目の当たりにする度に、これから始まる“介護”について真剣に考えざる負えなくなった。

そして、専門の科でMRI等の検査をした結果、認知症であることがはっきり告げられた。父がボケたのだ。

私は、家族の誰よりも父と相性が悪かった。
だから、いつか父の介護が始まったとしても、絶対に面倒を見ることはできない、そう思っていたのである。だが、ボケてしまった父は、私の嫌いだった父とは少し違っていた。

真面目な顔をして、とんちんかんな話をする。
私はなんだかおかしくなってしまって、父の話に笑いながら相槌を打つ。以前より会話の数が増えたのだ。これは意外な誤算であった。

もしかしたら、私、父の介護できるかもしれない…。

そう一瞬思ったが、今はまだ程度が軽い。だが、病状が進行すれば笑い事ではすまなくなる。私に、そんな父を、しっかり面倒見ることなんてできるだろうか。。

このことをランは知っていたのかもしれない。
だから、一足先に姿を消したのか…。

母との2人暮らしは、何不自由なく穏やかに続いているが、これまでと違って、私は真剣にこれからこの家がどうなっていくのか、考えるようになった。

母を残してここを出て行くことが私にできるだろうか…?


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この記事へのコメント
姉さんこんにちわ!

なんかすごく大変なことが起きてたんだね。。。
自分の親の年齢を考えると、介護ってひとごとじゃないなって思いました
姉さん、精神的にまいってない?
精神的に疲れるのが、まぢ体にこたえるのよ
あたしはそれでやつれたから(笑)
今は復活して体重も復活(笑)
Posted by ハム太郎 at 2006年05月03日 12:28
こんにちわ。

介護ですか…。
うちも母が癌を患ったので。
そろそろ、それも視野にいれないといけなくなったんだなぁと。
日々思ってます。
親父はいないので。
俺がしっかりせねばな…と。

yukikoさんの言うとおり。
ランちゃんはそれをわかってていなくなったのかもしれないですね…。
年老いて、今までの世話を仇で返す前に…っていう。
見た目通り優しい子ですね。
Posted by blue at 2006年05月03日 13:22
お久しぶりです。
yukikoさんの年令からいって介護はまだ先のことかと思っていましたが・・
そうですか。少し早いですが、ここが踏ん張りどころです。
逃げたりせずにご自分のできることは何かと考えてみてください。
結婚していてもいずれは何らかの形で直面するはずの問題です。
ほかのご兄弟の方々とも相談して、情報収集してみてください。

自分の価値は自分で決める、がyukikoさんのモットーですが、人間の価値は言葉ではなく行動です。長い人生、常に自分自身のことだけで悩んでいられる期間は案外短く、決心がついていなくとも人生のステージは回り続けています。
相手を好きだから嫌いだからで判断せず、家族における役割のひとつとして取り組んでみてください。
Posted by ちゃらじ at 2006年05月03日 13:34
今回の記事を読んで、他人事ではない、ととても強く感じました。いつでも誰にでも起こりうる事です。そして、そんな状態の両親の元からどんな形であれ(結婚、自立・・・等々)離れる事が出来るだろうか、と考えてしまう気持ちもすごくよく分かります。自分の幸せ、は自分だけが幸せでは実現できないものです。親も兄弟も皆幸せでないと、はやり上辺だけの幸せとなってしまうのではないだろうか、と私は考えています。yukikoさん、本当にこれはそうなった当人でなければ分からない苦労や心労だと思います。でも、心から応援しています!!!yukikoさん自身が倒れないように気を付けて下さいね!
Posted by あああ at 2006年05月03日 14:48
しんどい日々が続きますね。
私も、将来のことを考えると真剣にならざるを得ないのですが、病気になってからは、いま考えてもわからないことは、考えない方向でやってます(悪く言えば、行き当たりばったりですね)。
家族の形って、時間とともに変わっていくけど、見えない何かで繋がっているものですね。
これから、yukikoチャンが、どんな選択をするとしても、家族が一緒に過ごしたあの空間はずっと残ってるんだもんね。(なんか上手く言えないわ。ごめん。)
Posted by 由巳ゆみ at 2006年05月03日 18:58

 何のきっかけもなく
 この人たちと家が一切なくなってしまわないかと
 アタマをよぎった帰省中に。

 時間と記憶のヤヤコシサにやられるから
 入院という判断は間違いではないと思います
 
 生活設計なんて立てられない
 全部、想定外だもの。
 
 お金というのはベンリな発明で
 あなたがお家を出られても何かを
 保障する証になるし、そのことが
 思いやりを欠いているだとか
 親不孝だとは、親は思わない、らしい。
 
 勝手に幸せになるのが親孝行のときも
 あるとききます

 
 
Posted by anis at 2006年05月03日 19:30
今色々と気苦労を抱えておられると思います。気づかないうちに無理しないよう気をつけてくださいね・・。
yukikoさんの考えや意志もお持ちでしょうが、どうか「こうする事が一番楽かな」という方法を選んで欲しいです。
なるべく負担が少ない方を。そしてそれを負い目に思わないで。
私の義母も脳内出血の手術後、後遺症でアルツ状態になり今は近くに住む義姉が施設に入所させてくれています。
遠方なので時々しか会いにいけませんが、手術以前の記憶はあるので息子の障害や私の病気などを心配してくれては「手伝いにいってやりたい」と言ってくれます。
義姉曰く「数時間後には全部忘れてるのよ」。でもその言葉は本心だろうしありがたく悲しくなります。
本当なら私が介護すべきなのでしょうが、24時間目が離せない義母はおそらくずっと施設に預けることになるでしょう。
「私達は大丈夫だよ」としか言えない子供(嫁)もここにいますよ・・。
Posted by かつみ at 2006年05月03日 20:18
ハムちゃんへ
私は大丈夫。結構図太いみたい。
ご飯たくさん食べられるから…。
精神的に来ないよう、来ないよう、なんとか適当に気を抜いてます。
ありがとう、ハムちゃん。
Posted by yukiko at 2006年05月03日 22:40
blueさんへ
お母さんが癌…。
blueさんは優しいから、自分ですべて背負い込んでしまいそうだけど、
お互い、自分の人生もきちんと確立できるようにしなくちゃね。。

ランの顔、優しい顔してるでしょう?
そういってもらえるとすごく嬉しい。
あのまん丸の目を見るだけで癒されてました。
ホント、優しい子で…
Posted by yukiko at 2006年05月03日 22:45
Yukikoさん、なんだか次々と色んな事が起こってますね。
精神的なショックを実感するまでは案外 大丈夫だと思うのですが、気が抜けた時が心配です・・・
無理しないで!と言う言葉しか、今は出てきません。
私も数ヵ月ですが、義父の痴呆症に悩まされました。ガスの元栓を開けたり・・・ぞっとする事ばかり。
お父様が入院している間に、御家族みなさんで今後の事を話し合って、誰か一人がパンクしてしまわないようにして下さいね。
Posted by 南保 at 2006年05月03日 22:49
ちゃらじさんへ
そうですね。。先生にも70歳で発病するのは早いと言われました。
殆どが80代以上で、女性の方が多いそうです。

私はこれまで自分のことを考えるだけで精一杯でしたが、これからは、一体私には何ができるだろうか?と家族の一員として考えていきたいと思います。

ちゃらじさんのおっしゃるとおり、大事なのは、言葉ではなく行動。
最近いろいろな事があり、本当に思いやりがあって優しい人間は行動で示してくれる、ということがよくわかりました。私もそういう人間でありたいと思います。
Posted by yukiko at 2006年05月03日 22:50
あああさんへ
ほんとにそうですよね。。
幸せには、自分一人じゃなれないですもんね。。
周りに支えてくれる人間がいるからこその幸せであって。

あああさん、ありがとう。
Posted by yukiko at 2006年05月03日 22:53
ゆみちゃんへ
ゆみちゃんの体が心配。。
自分が辛い時でもちゃんとこうしてコメントをくれる。
本当にいつも勇気付けられます。ありがとう。

私も、今考えてもわからないことは考えない、この考え方が病気になって少しできるようになりました。母は、先のことばかり心配しているけれど、私の方がどちらかというとどっしり構えているみたい・・・。
これも病気したおかげかな^^
Posted by yukiko at 2006年05月03日 22:57
anisさんへ
すべての言葉がすーっと私の心に入ってきました。
私のこれまで、そして、これから…そのどれをも肯定してもらえたようで
とっても嬉しかったです。ありがとう、anisさん。
Posted by yukiko at 2006年05月03日 23:00
かつみさんへ
父も一番近い過去をすぐ忘れてしまうようです。
今は10年以上前にリタイヤしたはずの仕事の話を一生懸命してました。
なのに5分前に話した事は覚えてない。でも、そのときした会話は本物なんですよね。。

すでに、一緒に暮らしていた私達のせいだと非難をあびました。
でも、私はそう思わないし、これからも、母の人生も自分の人生も大事にしつつ、父の事を考えていこうと思っています。
かつみさん、エールのコメントありがとう!
Posted by yukiko at 2006年05月03日 23:06
南保さんへ
そう、内臓やら他の部分が健康なだけに、いろいろやらかしてくれるのが大変なんですよね。。

私より母の方がダメージが大きいようで心配ですが、そんな母を安心させるべく、皆でなんとかやっていこうと話し合いをしていきたいです。
南保さん、ありがとう。
Posted by yukiko at 2006年05月03日 23:10
自分の人生に影響を及ぼす出来事が次々と起こっているのは、きっと運命の転換点に来ているからだと思います。今起こっている事やこれからのyukikoさんの行動次第でこれからの人生が大きく変わっていくと思います。運命の別れ道と思われるものが明らかに目の前に現れる、という事が長い人生の中で存在すると私は考えています。それは今なのではないでしょうか。すぐに答えが出せるものもあれば誰にも正しい答えを出せないものもあるでしょう。たった一人で答えを出さなければならない時もあると思います。これから歩まなければならない長い道程を、強い意志をもって進んで下さい。つらい時はいつでもこちらのブログでぶちまけて下さいね。いつまでも応援しています。
Posted by マロ at 2006年05月03日 23:24
悲しいことが続いてますね…でも悲しいことの次はきっと嬉しいことが待っているはずです。
私も家裁や職場で悲しいことが続いているけどそう思ってます。
お互い大変だけど無理しないで出来ることでがんばりましょう(^_^)
Posted by love at 2006年05月04日 08:05
yukikoさん、こんにちは。お元気ですか?

本当に世の中、予測のつかない事が多過ぎですね。でも予め予測できる人生だったら、先が見えてしまってつまらないものになってしまうのかも知れませんが。

予測がつかない出来事だからこそ、実際に何かが起こった時、自分というものが試されるのでしょう。

yukikoさん、あまり気負う事なく、根を詰める事なく、心のギアをいつもニュートラルに設定して朝を迎えて下さいね。

いきなりトップやバックだと、大変な一日になっちゃいますから。
Posted by sari at 2006年05月04日 11:51
yukikoさん こんばんは。大変な状況にいらしたんですね。
以前のランちゃんのお話のところでランちゃん以外にも何かあったような印象を受けていたのですが・・。

ご自分や家族のお話をありのまま文字にするyukikoさん。yukikoさんの心の大きさ、底力を感じずにはいられません。
神様はそれを超えられる人にしか課題を与えないと言います。

どうぞお母様をささえ、ご自身もどうかご自愛くださいね。
事態が少しでも良くなることを心から願っています。
Posted by みんみん at 2006年05月05日 01:37
マロさんへ
マロさん、私も同じように思っていました。
これまでなかったような変化を感じています。
そして、今が踏ん張り時なのだと。。
でも、不思議と悪いことではないって思えるんです。
それでもへこたれる時もあると思います。
その時は、ぶちまけちゃうので受け止めてくださいね。
Posted by yukiko at 2006年05月05日 08:19
loveさんへ
私もそう思っています。
これまで私の病気に付き合ってくれた両親。
これからは私が付き合う番です。
でも、無理せず力まず付き合っていこうと思っています。
Posted by yukiko at 2006年05月05日 08:21
Sariさんへ
“心のギアをニュートラルにする”
素敵な言葉をありがとうございます。
私にとって、とても必要なことです。
突っ走ったり、視野が狭くなりがちな私。
熱く暴走しないよう、ニュートラルにするよう心がけたいと思います。
ありがとう、Sariさん。
Posted by yukiko at 2006年05月05日 08:24
みんみんさんへ
ありがとうございます。
私がありのままを文章にするのは、皆さんのコメントが欲しいからだと思うんです。こんな時どうするのかな?とか私の考え方間違ってないかな?とか、書いて、コメントを読んで、軌道修正することや納得することで自分を保っているように思います。
時には痛いこともありますが…^^
これからもよろしくお願いします。
Posted by yukiko at 2006年05月05日 08:28
きょうランが認知しなかったー。
だがyukikoは父っぽいシャワーしたの?
そしてここへyukikoと入院するはずだったの。
そしてyukikoが一足に話しないです。
Posted by BlogPetのラン at 2006年05月07日 13:46
お久しぶりです。
お父様のこと、ブログを読んで驚いてしまいました。
なんてコメントしたら良いのか言葉が見つかりません。

yukikoさんやお母様の心と身体に無理がかかりませんように。
そして、お父様の病状が良い方向に向きますように。


Posted by happy_horse at 2006年05月07日 22:38
happy_horseさんへ
お久しぶりです。
ね、私もこんなに早く父がボケるとは思ってませんでしたから、驚いています。でも、大丈夫。なんとかなりそうです。
happy_horseさん、ありがとう。
Posted by yukiko at 2006年05月08日 09:34