2005年10月28日

哀しい物語

私には姉と弟がいて、女女男の真ん中である。
前にも書いたが、子供の頃は、それはそれは激しい生存競争を繰り広げていた。
私は、ちびちびとやる方だったので、その隙に私の分のジュースを弟に何度も飲まれた。だが、これは仕方がない。より強いものが生き残っていく為の競争だ。子供のくせにちびちび残しておいた私が悪かったのだろう。だが、そこにはルールがあってもいいじゃないか。私はきちんと名前を書いていたのだ。それなのに、弟は飲んだ。

だから、私は母に泣いて抗議した。
「どうして、どうして私の分飲んじゃうのにお母さんは弟を怒らないの!?あんな奴生まれてこなければ良かったのにっ!ヒック、ヒック」と。すると母は、「あら、あのね、うちはもともと子供は二人でいいって言ってたのよ。お姉ちゃんが生まれて、次が男の子だったら良かったんだけど、あんた女の子だったから。だから、もう一人作ったの。そしたらやっと男の子だったのよぉ」と言ったのだ。私はまだまだ小さな女の子だったのだ、何も悪いことなどしてない幼い女の子だったのだ。母の言葉にショックを受け、放心状態の後、私は「そうか・・弟じゃなくて私が生まれてこなければ良かったのか」と小さな小さな胸を痛めた。

鬼のような母の言葉はさらに続く。
「お父さんなんてひどいんだから。あんたが生まれてね、電話かけて「女の子だった」って言ったら、生まれたその日に顔も見に来なかったのよぉ〜」と。私は、母だけでなく父からも、いや誰からも望まれずにこの世に誕生してしまったのか。
「私、本当に生まれてこなければよかった・・。」

その言葉のせいかどうかわからないが、私は、あまりダダをこねず、言いたいことがあっても口に出さない子供になった。

弟は、欲しいものがあるとその場に寝転び、ぎゃーぎゃー泣き、「買ってぇ、買ってぇ」とダダをこねていた。すると、母は、面倒くささからか、弟の欲しがるものは買っていたように思う。だが、珍しく私が「あ、これ欲しい」と言って、スーパーのかごに手を置き、上を見ると、そこには全然知らないおばさんが居た。そしてそのおばさんに「お母さん、もうあっち行ったわよ」と教えられた。私には、ダダをこねる暇さえ与えられず、置き去りにされてしまったのだ。

そんな私が中学生になると、また哀しい出来事が起こった。
同じ中学校へ通うのだから、制服が姉のお下がりなのは仕方がない、と幼心に思っていたのだが、入学式へ出てみると、皆の新品な制服と私のお下がりの制服は明らかに色が違っていた。恥ずかしくて悲しかった。家に帰ってわんわん泣くと「サイズが合わなくなったら買うから、もうちょっと待ってなさい」と言われた。私は言われるまま待ち、身長が伸びて姉の制服が合わなくなった時、やっと真新しい制服に袖を通すことができたのだ。

しかし、なにより辛かったのは、体操服が一枚しかなかったことだ。
私は毎日バスケ部の練習に出ていたので、当然毎日体操服を着る。だが、一枚しかない。だから、どんなにクタクタに疲れていても、家に帰ると私は急いで体操服を手で洗い、脱水をかけ、冬場はアイロンをかけて乾かした。

その頃私は、「早く大人になって自分でお金を稼ぎたい」そう思っていた。自分で稼いだお金なら、自分の好きに使える。体操服の一枚なんてすぐ買えるのだ。
今よりずっと自立心のある中学生だった。

私は、ずっとうちは貧乏だと思っていた。
だが、大人になってから、姉と子供の頃の話をした時、記憶にかなりの差があることを知って、また大きくショックを受けた。
姉は「パリっとスーツを着たお父さんが、参観日に来るのがすごく嬉しくて自慢だった」とか、体操服の話をすると「え?そんなことがあったの?全然知らなかった。言ってくれれば何とかしてあげたのに」とか。“あれ?あなたと私、同じ親でしょうか?”

私の母親参観日の時など、専業主婦であるにも関わらず、母は来なかった。私はずーっと後ろを向いて待っていた。その日は「お母さんの似顔絵を描く日」だったのだ。困った先生が、「誰でもいいから描いてね」と言ったので、一番綺麗だったまいこちゃんのお母さんを描いた。家に帰って泣きながら母を責めると「ごめんね」と言い、後でキャンディーの詰め合わせみたいなものを買ってきて、私を丸め込んだ。なぜ母が来なかったかというと、近所のおばさん達と家でお茶を飲んでおしゃべりしていたら、すっかり参観日のことを忘れてしまったそうだ。

こんな風に育てられた私は、愛に飢え、愛される悦びを知らず、愛し方を学ぶことも出来ずに大人になってしまった。そんな女が誰かを頼ったり、甘えたりなど上手にできるわけがない。かくして、私は超マイペース、自分の事は自分でする、他人のことは他人がする、というスタンスで生きていくようになってしまったのだ。

だが、今、両親を独り占めし、やっと子供の頃得られなかった“親の視線”や“愛情”を少しずつ取り戻しているように思う。病気になって面倒を見てもらっているのも、もしかしたら、神様のいたずらかもしれない。

だが私は、今、ちくちく復讐している。基本は“やられたらやり返す”だ。
母が、何か私に文句を言う度「あの時、体操服一枚しか買ってもらえなかったから」とか「参観日にお茶しててバックレたから」とか、必ず“そういう風に育てられたからこうなっちゃったんだぞ”と母の頭の中にすり込んでいるのだ。
母は「またそんな古い話ししちゃってぇ」と言うが、やはりどこかにひっかかるものがあるのだろう。その類の話をすると、それ以上文句を言わなくなる。

あ、そういえば、また一つ思い出してしまった。
幼い私が「私はどこから生まれてきたの?」と母に聞いた時、母は、「橋の下から拾ってきたのよ」と言い、そして、その橋を一緒に通った時、ご丁寧にも「ほら、あそこにいたのよ」と教えてくれたのだ。私はそのことをしばらくの間信じ、時々その橋の下へ行っては、「ほんとのお母さん、どこにいるの?」と泣いた。

子供を何だと思ってるんだ!くそババァ、いつか○○○してやる!!

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この記事へのコメント
はじめまして。
私も同じ境遇です。
不幸ではなかったけど、子供らしからぬ自立心が育ってしまって、あげくにかわいげのない子とよく言われてました。
大人になってからなんて、もっとかわいくない。かわいく甘えれる女子がうらやましい今日この頃でございます。
Posted by りえ at 2005年10月28日 02:01
りえさんへ
初めまして、コメントありがとうございます!
そう、決して不幸ではなかったけれど、可愛さを身に付けることのないまま大人になってしまった。私も、本当にかわいく甘えられる女子が羨ましい限りでございます。
Posted by yukiko at 2005年10月28日 08:02
おはようございます(^▽^)
子供の立場で言えば、そうだ〜!兄弟は平等に育てるべき!男物のお下がりはあんまりだったぞ!
私は上に兄1人ですが、甘えるというよりあまりの待遇の違いにひがみっぽい子で・・今もそうです。
親の立場では、すみません・・です(^^;)

でもどうしても一番上の子には男女問わず親の目は厳しくなってしまいます。
しっかりしなさいと過剰に干渉しがちで。
だから今思えばほっとかれても気が楽だったかな?と思います。

下の息子には・・甘いです。障害もあるせいか「もう、しょうがないな」と何でもすませてしまうダメ母(汗)
その分主人が厳しいです。yukikoさんのお父様も弟さんには厳しかったのでは?男同士は容赦無い感じです。

yukikoさん今がチャンスvご両親に甘え倒しちゃいましょう。
ご両親も嬉しいと思いますよ〜v


Posted by かつみ at 2005年10月28日 09:12
私は、妹がいるんですが やっぱり、親に対する思いが違いますよ。
それに、妹と私は対象的。
同じ親に育てられても、いろんなギャップありますよね。

yukiko姫 幼い頃の恨み、ぶつけてしまいましょう〜〜〜〜
Posted by はなもぐ at 2005年10月28日 10:24
今日は随分ご機嫌斜めみたいですね。(苦笑)
最後の○○○は「親孝行」でしょう?貴女は良い人だ。
Posted by ウィンザークロス at 2005年10月28日 14:48
ウエ〜ン!哀しいです〜。心にグサリときました。
そんな言われかたって…。
僕だったら、放心状態じゃ収まらずに、暴れて家飛び出してますよ。
ちなみに現在、暴れてはいませんが、家出みたいな独り暮らしです。笑。
ジュースをちびちびってことは、ショートケーキのイチゴは残す派ですか?

>くそババァ
って、それくらい元気があれば病気も治りそうですね。
安心しました。両親に対する思いが長生きの秘訣かも。
今までの分思いっきり甘えちゃってくださいね。
yukikoさんにはその権利がたっくさんあるはずです。ぽちっとな。
Posted by かず at 2005年10月28日 18:52
私は長女で弟が一人いますが、やっぱり、両親の対応は違っていたような気がします。長女で良かったことも、悪かったことあったという感じです。もしも、自分にもう一人子供を授かる事ができたら、兄弟わけへだてなく育ててあげたいなあと思っています。
Posted by happy_horse at 2005年10月28日 20:32
私には姉と妹がいて、3姉妹の真ん中です♪
母親と、子供の育て方について話した事があったのですが、うちの母親は「平等に育ててきた。親が子供に対して区別するなんてありえない」と言います。
でも、写真館に勤める妹は最近の親は明らかに態度が違う人がいるといいます。
例をあげると、父親が娘にだけ愛情を注いでいる場合。
息子には衣装は一枚でいい、後は任せるといった感じ。写真も一枚のみ。
娘には何枚も着替えさせ、色々なショットを撮り、写真も数十枚。
う〜ん。明らかに違いますな。
Posted by あさひ at 2005年10月28日 21:11
かつみさんへ
なるほど・・。うちの母も姉には一生懸命厳しく躾けた、それが、良かったかどうかわからないから、私は放任にしたと言ってましたが、やはり一番上っていうのは、どうしても関心が行ってしまうのでしょうね。
うちの父は、子育てには参加してませんでした。せっせと働くだけで精一杯だったのでしょう。。
両親に甘えられるのもあと一年くらいかな、それ以上経ったら立場逆転になりそう。その前にさっさと退散しなくちゃ!!!


はなもぐさんへ
姉妹でもそうなんですか。。二人も三人も男も女も関係なしなのかもしれないですね。今日も一発恨みつらみをかましてみました☆
Posted by yukiko at 2005年10月28日 21:42
ウィンザークロスさんへ
やだ、どうしてわかっちゃったんだろう??
しかも良い人だってことまで☆


かずさんへ
子供の頃はイチゴは残す派でしたが、環境のおかげで、今は好きなものから食べてます。
今までの分を取り返そうと頑張り中ですが、父も子供に返りつつあって、結構ヤバイ。くそババァが息切れしない程度にしておかないと。。
ぽちっとありがとう!
Posted by yukiko at 2005年10月28日 21:56
ボケた人に対しツッコむのは最低限のマナーだと固く信じてるので。

「自分でゆーな。」
Posted by ウィンザークロス at 2005年10月28日 22:04
happy_horseさんへ
一姫二太郎なんですね。
やっぱり女の子と男の子では、親の接し方って違うものなのでしょうね。
娘っちがお姉さんになったら、ホント、分け隔てなくお願いします!!
じゃないと、私みたいになっちゃいますよ〜〜!


あさひさんへ
あさひさんのお母さん、素敵です。あさひさんが愛情を注がれて育ったと言うことが、>3姉妹の真ん中です♪←この音符から伺われます。
うちの姉はかなり差別して育ててます。私は何度も注意してるのですが・・。息子は溺愛、娘にはきつくあたってます。7歳にして「どうせ弟だけ可愛いんでしょ」と口にするほど。。私は姪の気持ちがわかるだけに、私が一生懸命可愛がってあげたい。

姉ちゃん、読んでるかっ!!
Posted by yukiko at 2005年10月28日 22:04
ウィンザークロスさんへ
くぅ〜〜、マナーは、ほ、ほんと大事です。。
これからも4649!
↑つまんない・・自分で言っておきます。
Posted by yukiko at 2005年10月28日 22:13
ねえ、甘えたいときに、父親が子供になってたらどんな気持ち?

僕は、そんなふうになった父は見たくないし、想像もできないよ。
たぶんパニックになるかな。
ってことは、子供の頃の両親は、いつまでもそのまんまの両親じゃないってことか〜。う〜想像したくないな。またまた考えさせられます。

とにかくyukikoさんは、がんばりすぎるくらいがんばってきたんだね。
その苦労はたぶん僕の想像を越えます。
自分のことを傷つけたりしてませんか?
力を抜いて、マタ〜リする時期に入ったのかもね。
ここで一句!

秋の夜に
このエッセイが
沁みてくる。

っていうのはクサイね。笑。





Posted by かず at 2005年10月28日 22:48
かずさんへ
かずさんのお父さんは素敵な方なのでしょうね。
うちの父は、本当に仕事一筋の人でした。家のことや、子育ては殆ど母一人でやっていたと思います。
その上、私は父に対して近寄りがたいところがあったので、子供の頃から父親に甘えるということはありませんでした。
だから、父親に甘えられるかずさんが羨ましいな。。

父はもともとわがままな人で、今考えると、最初から家族に甘えているようなところがあったかもしれません。それが今は、リタイヤしパリっとする場を失って、わがままで子供の部分が前面に出てきたと言う感じ。。

両親は確実に老いているんだと、日々感じます。
だって、自分も年取ってるんだもん、ね。。
Posted by yukiko at 2005年10月29日 02:05
はじめまして。
ブログのタイトルに惹かれて覗かせていただきました。

この記事、本当に衝撃的でした。
本当に同じご両親から??って思っちゃうのも無理も無い接し方ですよね。
どこの家庭も母親は男の子に甘いといいますけれど・・・。
跡継ぎ跡継ぎっていう意識が強いご両親だったのかなぁ。
私は二人姉妹で、「お姉ちゃんでしょ?」といつも我慢させられた記憶はありますが、ここまではっきりと辛く当たられたことはありません。
いろいろとご苦労されましたね。
でもyukikoさんはとてもお強い方だと思いました。
今後は○○○すること(なんだろう?)を励みに頑張ってくださいね(笑)
また遊びに来ます^^
Posted by 月子 at 2005年10月29日 11:18
月子さんへ
うちの両親は、当時は、大変だったのだと思います。
跡継ぎである弟は、奥さんの実家に入り浸りになりましたが、
それで幸せなら・・と言っています。
母は「神経質になってたら子供三人も育てられないわよ」と豪語していますが、無神経すぎっ!!
でも、今はとても良い関係を築けています。
○○○なんでしょうね。。
また是非遊びに来てくださいね☆
Posted by yukiko at 2005年10月29日 14:57
ユッキーは大人です。当たり前ですけど。
レス読んでてせつなくなってきました。今夜も涙です。
小さい頃母に甘えることができなかった僕です。中学のときは、くそばばあって言ってました。父のことは甘えるというより尊敬しています。
お互い両親といつか分かりあえる日がくるといいね。
Posted by かず at 2005年10月29日 17:17
あれ?この年で両親に甘えるってどうやるんだっけ?
「yukikoさんには甘える権利がある」とか書いておきながら、自分ではできないじゃん!
バカだ俺…。
もう甘え方、忘れちゃったよ…。
あの頃に甘えておけばよかったな〜。
そう思うとまた…。
男のクセに泣いたりしてごめんね。
Posted by かず at 2005年10月29日 18:25
かずさんへ
お父さんを尊敬してるって素敵ですね。
お母さんに甘えられなかった分、結婚したら奥さんに甘えちゃえ!
でも、ちゃんと奥さんも甘えさせてあげないと、どっか行っちゃうぞぉ。
Posted by yukiko at 2005年10月29日 22:22
私も姉と弟がいます。同じ思いするんですよね。
私が姉と同じ事をしたいって言うと「お姉ちゃんの年までガマンしなさい」だけど弟が私と同じ事をしたいって言うとすぐ出来ちゃうんだよね。
男の子だからってだけで特別扱いは本当に許せませんわ。
橋の下で拾ったって話も同じですわ。
どこの親も同じ事やって、言ってるんだね。そして子供達は心ない言葉に傷つき一生引きずっていってしまうのね。
Posted by Naomi at 2005年11月01日 21:43
Naomiさんへ
そうですか、Naomiさんも同じ思いされてましたか。。
最初に生まれた子供と、望まれて生まれた男の子に挟まれて生まれてしまったサダメなのか。自分で選んでしたことじゃないだけに哀しいですね。
ほんと、それにしてもどうしていう必要もない心無い言葉を発したのか、いまだに理解できません。冗談だって今言われたら笑うだけだけど、小さな子供に言ったらやはり記憶のどこかにずーっと残ってしまうものですよね。。
Naomiさん、お互い幸せになっちゃいましょうね☆
Posted by yukiko at 2005年11月01日 23:49