2005年10月14日

え?ホントに!?

仕事をしていた頃は、一日は長く、そして一週間はもっと長く感じられたが、一年はあっという間だった。だが、体調を崩し、会社を辞めてから10ヶ月が経った今、早いような遅いような、なんだかよくわからない。おそらく、忙しい日や忙しい月、そういったメリハリがない日々だからだろう。

倒れこんでしまったあの頃から比べたら、本当に良くなった。
だがここ数ヶ月、もうあと一歩というところなのに、その一歩がどうしても踏み出せずにいる。どうしても一ヶ月に一度、一週間くらい寝込んでしまう。そして、例え起きていられたとしても、常に動悸や胸痛に悩まされ、いまいちスカっとしないのだ。なんだよ、勘弁してくれよ。

今日は3週間に一度の診察日だった。
先生と私は、面接官と受験者のように、テーブルを間にして真正面に向き合って座る。先生は私の目の前でカルテを広げ、前回までの治療と経過を毎回見ては、私から話し出すのを待ってくれる。そして私が言う通りにカルテに書き綴る。とてもオープンなやり方だ。

そして私は、とりあえず最初に結果を言う事にしている。「この3週間は調子良かった。」こういえば、話は早い。「ふん、ふん、顔色もいいし、それじゃぁ、前回と同じお薬でまた3週間後に。」といった感じで診察はスムースに終わる。

だが、今日の私はじっくり話したかった。
ここ数ヶ月の足踏み状態が不安だったからだ。が、先生はもうわかっていた。
この先生、実に的確な判断をする。
経過をじっくり見てくれているのがよくわかる。

今回、新しい治療法をすすめられた。それは2週間の点滴治療である。
飲み薬を増やす手もあるが、私の場合、薬を増やしても根っこが深すぎて、そこまで治療するにはかなり時間がかかってしまうというのだ。それに比べ、点滴は直接血液に吸収されるから、副作用も殆どなく、確実に早く一歩前に進めると先生は言い切った。だが、2週間毎日通院して点滴を受けるか、2週間入院して点滴を受けるか、どちらかを選択しなければならないという。

私の家から病院まで車で約1時間かかる。これまでは、なるべく手があいている人にお願いして付き添ってもらい通院していた。だが、2週間毎日付き添ってもらった上、点滴は一回につき2時間くらいかかるだろう。それを待っててもらうのは忍びない。
病室は個室でテーブルや椅子もついていて、テレビもある。食事は部屋で取れると言うし・・。だが、点滴のためだけに入院するなんて贅沢だな、毎日一人で頑張れば2週間位なんとか通院できるだろう・・などと今、どちらにしようか迷っているところだ。

だがこの日私は、この話がぶっとぶような事実を知ることとなった。
私は、「パキシル」という比較的新しい薬を治療のメイン薬として飲んでいる。
今の先生にたどり着くまで、2度ほど病院を変わったのだが、どの病院でもこのパキシルを処方されていた。だが、それぞれ先生方の、この薬に対する認識が皆違うのだ。

私は年齢の事もあり、最初の先生に「薬を飲んでいても、妊娠できますか?」と聞いた事がある。その先生は、「妊娠がわかった時点で薬を止めれば大丈夫ですが、止めると病気がまた悪くなるので、薬を飲まなくなってから妊娠は考えてください」と私に言った。
そして二人目の先生は、「パキシルは新薬だから、データがない。どんな奇形児が生まれてくるかわからないので、薬を止めてから3ヵ月後であれば、妊娠しても大丈夫でしょう」と言った。

この病気、症状が治まっても、再発防止の為に薬を飲み続けなければならない。
30代後半だというのに、この先何年薬を飲み続けるのか予想もつかない。
だから私は、子供を持つ事を諦めるよう自分に言い聞かせてきた。
今の先生も、あと2年くらいは薬を飲まなければいけないだろうと言っていたし。
もうその時が来ても、私には妊娠する力は残っていないだろう。

そして今日、私がもっとも信じている今の先生に同じ質問をしてみた。
すると、「まったく問題ありませんよ」というではないか。
私は一瞬耳を疑った。そして「え?妊娠初期でもですか?飲み続けても赤ちゃんに何か支障をきたさないんですか?今まで、新薬だからデータがないとか、妊娠したら薬を止めなければいけないとか、体から薬がぬけるまで3ヶ月かかるとか言われて諦めていたんですがっ」とまくし立てた。

先生は、ゆっくりと、だが力強く私に言った。
「子供に奇形が出る確率は、薬を飲んでいない場合と同じです。ただ、授乳期だけは気をつけなければいけませんが」と。
そして「それと、病状が落ち着いてからでないと、妊婦本人が辛くなるので、症状が安定するまでは待ってくださいね」と。

私は頭がぼーっとした。
今まで赤ちゃんとか子供とかもう考えないようにしてきたのだ。
逆に、公園デビューも面倒くさそうだし、運動会とか疲れんだろうなぁと考え、子供のいないこれからの人生設計ばかり考えてきたのである。

それなのに、私、子供産めるかもしれないんだって・・。
こうして書いていてもまだ実感がわかない。
だって、そんな簡単に頭の中切り変えらんないじゃん。

私は今の先生を信じている。
今までは、私の訴えに首をひねる先生ばかりだったが、この先生は、私が質問する事に対して、時には、紙に図を書いて説明してくれることもあれば、難しい脳の仕組みまで説明してくれることもある。一度も納得しないまま診察室を出た事がないのだ。
薬についてもこの先生の説明が一番納得できた。とするとやっぱり、産めるのか。

そして、だんだん頭の中が落ち着いてくると、私はものすごく怖くなってきた。
だって、今の先生に出会わなかったら、私の人生大きく変わってたかもしれないのだ。

テレビや雑誌で「名医」について特集される意味がようやくわかった。
ひとごとでは決してない。病院も医者も私達患者が選ぶのだ。
自分にとって最良のパートナーになれる医師を選べる目を、これからは養っていかなければならない。

だって、自分の人生、医者に変えられちゃたまんないじゃん。

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Posted by late_bloomer at 22:53│Comments(17)番外編 
この記事へのコメント
妊娠初期にうっかりカゼ薬を飲んでしまう人は多く、産婦人科で必ずといっていいほど「薬飲んでしまったんですが、大丈夫でしょうか?」という質問があるらしい。
だけど、ある産婦人科の医師がコラムに書いていた。
「全く薬の服用もなく、健康体の妊婦でさえ、必ず健常児を産めるわけではない。なぜか先天的な病気や奇形を持った子が少数ながら生まれてくる。逆にレントゲン撮影してしまったり、薬を飲んでいた妊婦からもたくさんの健常児は生まれてくる。医師には100%を予測することはできない。命とはかくも不可思議なものなのだ」と。
生まれくる小さな命が、生まれたいと強く望んで母の胎内に宿るのだとしたら、その力を信じてあげることは大切かも知れない。
まだ失われていない未来を悲観するより、これから手に入るたくさんの幸せに視点をあわせていけば、今まで見えなかったものも見えてくるかも。
と、えらそ〜ですみませんっ(汗)
Posted by ナナっち♪ at 2005年10月15日 04:14
通院するか、入院するかで迷われているんですね。
点滴を受けるためだけに 入院するのは、贅沢じゃないと思いますよ。せっかく新しい治療を始められるんだから、それは 大きな一歩でもあると思うし、yukiko姫にとって ちょっと先 しんどくなるかもって思う選択は避けたほうが???

子供のことは、健康でいてもお腹にいる間も出てきても不安です。
ナナさんの言う通り、まだ失われてない未来を悲観することはないと思いますよ。私は、子供を一人病気で亡くしてます。
でも その子は、生まれた時も元気だったし その病気になるまで元気でした。だから、子供ができたら その子を愛せる愛情があれば大丈夫だと思いますよ。
なんて、私も真似して、、、えらそ〜にすいません
Posted by はなもぐ at 2005年10月15日 05:19
医者によって自分の人生が変わってしまう、、、ホントですねぇ名医と迷医ではエライ違いだし飲まなくてもイイ薬を“ガブガブ”と飲まされる可能性もあるわけだしねぇ〜

知り合いの人が喘息のような症状でいくつかの病院に行って治療をしてもらったんですよぉ でも薬を飲んでも一向によくならない 最後に辿り着いた大学病院の“名医”に見てもらったら一回で治ったとのこと、、、
実はこの話は楽しい話がテンコ盛りなのでブログに書こうと思ってます

ユキちゃんならイイお母さんになれるよぉ
良かったねぇ〜^^
Posted by ウイパパ at 2005年10月15日 11:32
はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。

セカンドオピニオンという言葉を知ってますでしょうか?
主治医の意見だけでなく、他の医者の意見をきくという仕組みで、最近日本でも徐々に広がりつつあります。

ユキさんは健康な子供を産めるのか否かという重大な問題に直面しています。他の先生の意見もきいてみてはどうかと思います。

もしよかったら私のブログも見にきてくださいね。
専門的なブログなのでつまらないかもしれませんが(*_*)
Posted by 長 英一郎 at 2005年10月15日 11:44
ナナっち♪へ
ナナっち、本当に素敵なコメントでした。涙出ちゃって。。
ほんとにその通りですね。誰にも100%の予測なんてできない。
もし、私に小さな命が宿ったら、その力を信じて大切にしたいと思います。
本当にありがとう。


はなもぐさんへ
通院・入院について母に相談したら、軽く「点滴が2時間くらいなら、その間、私ちかくの練習場でゴルフやってるから、付き添ってやるわよ。めんどくさい時は隣で寝てればいいし。何時間も点滴にかかるなら入院した方がいいけど、大好きなブログも書けなくなるし、自由きかない入院生活だったら私は反対」と言われ、これも、ホロリ。。私は、どうもしんどいと思うようなことをまず想定してしまうようです。はなもぐさんのおっしゃる通り、楽な道を選択しようと思いました。

お子さんの話まで、ありがとう。。
自分の視野の狭さを思い知りました。
本当にありがとうございました。
Posted by yukiko at 2005年10月15日 12:55
ウイパパへ
うふふ、喘息のお友達のお話、治った上におもしろい話がてんこ盛りなんておいしいとこだらけですね。
ブログにUPされるの楽しみにしてます☆

いいお母さんになれるかな?すっげー怖くなりそう。。


長 英一郎さんへ
初めまして、コメントありがとうございます!
セカンドオピニオン、結婚したら、もうちょっと本格的に動いてみようかなって思っています。何しろまだ独身だから・・。

専門的なブログでした^^
じっくり腰を据えて読ませていただきたいと思います。
また、是非遊びに来てくださいね☆
Posted by yukiko at 2005年10月15日 13:08
信頼できる医師や医療スタッフに出会うのは本当に難しいと思います。特に妊婦や授乳婦に対する薬の考え方って医師の考え方によるところが非常に大きいですよね。yukikoさん自身が納得できる良い医師のかたが見つかって本当に良かったなあと思います。
みなさんのコメントと重複してしまいますが、先生とたくさん相談されて、ご自身の一番楽な方法で治療を続けてください!!
Posted by happy_horse at 2005年10月15日 13:54
yukikoさん、また道が開けてきましたね!yukikoさんが動かしたのですよ。
いいお医者さんと出会って良かったですね。私はこの世に八方塞りなんて無い!と信じています。

P.D(病名略)の患者は7.8割が女性だと言われてます。
そうなると「女の営み」は避けて通れませんし、あらゆる方法が考慮されてるハズだと思うんです。
P.Dでも結婚・出産され、旦那さんのサポートを受けながら、
素敵な夫婦関係を築いている方も多くいます。
世の中、うまく出来てるんです。きっとサポートしてくれるパートナーが現れると思います。

点滴治療って、1週間入院で1週間通い・・とかは出来ないのかな?
入院もいいんじゃない?と思ってしまった。1人の時間を持つのも良さそうだし。
何かあったら、プロが対応してくれるし。贅沢ではないと思いますよ。
Posted by こんこん at 2005年10月15日 16:28
こんにちわ。2回目です。
僕も毎朝食後に薬を飲んでいます。
チラージンという名前の薬で2錠です。
医者には、「治る見込みが無い」とか言われて、超ショックだったけど…。
今はどうにか落ち着いて生活しています。
3ヶ月に1度の定期健診と1年に1回の採血をしています。
yukikoさんは信頼できる人を見つけられて良かったね。
僕のほうは、低血圧(60〜90)という健康診断の結果から病名を見破った人をとりあえず信用しています。
子供が産める(産ませる)かどうかはまだ怖くて聞いたことが無いんです。
「産めない」って言われたらまたまたショックなんで。
yukikoさんのブログ読んでたら元気出てきましたよ。
ありがとう。
yukikoさんこれからもがんばってね〜。
ポチっとしましたよ〜。
Posted by かず at 2005年10月15日 18:32
happy_horse さんへ
今まで、風邪やぎっくり腰とかそういうものでしか病院を選んだ事が無く、いつも自宅の近くですませていましたが、こんなに、同じ病気に対して医師によって対応の仕方が違うのかとびっくりしました。
今の先生を信じて治療に励みたいと思います。ありがとうございました☆


こんこんサマ
本当にびっくりしました。
ずーっと無理って思ってきた事だったから・・。
でも、本当にいらっしゃるんですよね、同じ薬を飲んでいても出産されてる方が。負けちゃいられません!!

私も入院もいいかなって考えました。
一人になってのんびりゆっくり、3食昼寝付き☆
まさに一週間通院、一週間入院だったらベストだったんだけどなぁ。
ただ、たった2時間くらいの為に、他の時間が拘束されるのはちょっと辛いかなとも思っています。ただ、贅沢だとは思わなくなりました。
ありがとうございました☆
Posted by yukiko at 2005年10月15日 19:50
かずさんへ
かずさん、もし「生ませることができない」と言われても、その言葉をそのまま信じないで下さいね。今の先生と相性が良くても、違った意見もあるかもしれないと、身を持って知ったからです。

お互い頑張りましょうね、無理しないでゆっくりと。。
ポチっありがとう☆
Posted by yukiko at 2005年10月15日 19:54
パキ(笑)。
こいつは、男性の場合、ほぼ全員がEDになると噂されていて、ヤフチャの鬱関係の部屋では、お別れの挨拶が遅れて相手に伝わらなかった時、「パキ」とか言います(^^;)。薬価が高いから、わしゃ好まないがー。

点滴療法って初めて聞くな〜。いったい何を点滴するんだろう??
一気に叩くってやり方だよね。イヤ、初めて聞くなー。
Posted by 由巳ゆみ at 2005年10月16日 02:42
ゆみちゃんへ
そうみたい。先生も言ってた。
薬も、女性と男性によって副作用が違ってくるから、その辺の事情も含めて
処方するようにしてるって。私が男だったら違う薬使ってたって言われたんだ。そういうことだったんだ・・。
確かにパキちゃんは薬価が高い。。

点滴治療は一気に叩くらしいんだけど、なんって言ってたかな、肝心な薬の名前忘れちゃったよ。も一回ちゃんと聞いてくる!
Posted by yukiko at 2005年10月16日 09:11
点滴で一気に・・とはパルス療法かな?
本当に医師によって様々ですよね。私は同じ院内の医師二人に掛かりましたが両極端な見解でした。
最初の医師はPDの発作を起こさない為必ず薬を予防目的で飲む事、発作を起こしそうな環境は避ける事と指示しました。
今の医師は発作が起きてから薬は飲んでもいい事、薬や発作に捕らわれて何も出来なくならないよう指示しました。
生活上何も出来なくなるのは困るけど、出先で発作を起こしたら薬飲む前に救急車呼ばれそう(^^)なので悩み所です。
子供の奇形障害病気は必ず全体の何%の割合かで生まれます。
母親は皆どうして?と思いますが殆どが原因なんてありません。私はくじにあたっちゃった・・と考えてます(^^;)
お母様、やっぱり暖かくて頼れる方ですね。私ももらいホロリ。。
今は家族に頼っちゃいましょう〜。大事な時ですから。
私も真似になって・・(汗)えらそ〜ですみません。
Posted by かつみ at 2005年10月16日 10:45
かつみさんへ
同じ院内で二人の医師にかかれるのもいいですね。
でも、本当に両極端。。
私の先生は、根本的に治さないといけないので、2年間は薬を飲み、セロトニンが正常に出るようにする必要があるという考え方。そして自信がついてきたら、徐々に発作が起きそうな場所へ行ってならし、どこへ行っても大丈夫という記憶を植え付け、そして減薬する方法をとると言っていました。2年で殆どの患者が完治したと豪語していました^^

子供の奇形障害病気は、原因なんてない。。
今回、そのことを改めて深く気がつきました。
なのに、母親が自分を責めてしまったり、また責められたりすることが多いと聞きます。すべて神様の贈り物なんですよね。
かつみさんには、教わりっぱなしです。
これからもよろしくお願いします!!
Posted by yukiko at 2005年10月16日 14:38
はじめまして。医師と患者さんとの相性と言うのにつられてやってきました。医者に人生変えられちゃ、たまらんと言うのは全くそのとおりですね。
Posted by Eishi_Asano_MD_PhD at 2006年01月09日 09:14
Eishiさんへ
初めまして、コメントありがとうございます。
私、ずっと諦めてたんです、もう年齢的にも難しいからって。
だけど、もっと早く産めるってことがわかっていたら、私の生活が変わっていたかもしれない。もう多少なりとも人生を変えられてしまったのかもしれないですね。。

でも、自分の力でもう一度しきりなおしです!!

また是非遊びに来てくださいね☆
Posted by yukiko at 2006年01月09日 11:07