プレゼントを持って友人との待ち合わせ場所に向かった。
中身ももちろんだが、プレゼントを渡すタイミングも結構重要である。
最初に渡してしまっては味気ないし、相手にとっては荷物になってしまう。
やはり、別れ際にさらっと渡すのが一番だろう、そう考えながら車を走らせた。
彼とは知り合って7年くらいになるだろうか。
ガタイはデカイがなかなか繊細なところがあり、彼は、失恋するとヘロヘロになってしまう。そんな時、よく私のところに連絡をよこすので、「じゃぁ、メシでもどう?」と言って、食事がてら彼の沈みきった顔を眺めつつ話を聞くことになる。大抵の場合、彼が悪いので、私は優しい言葉をかけるより、「自業自得、よく考えて」なぁ〜んて冷たいセリフを吐いて、お開きにしてしまうことが多い。
また、私が弱った時には彼が話を聞いてくれたこともあったが、数にしたら彼の方が断然多いだろう。これまでは、“お世話になった”というより、“お世話してきました”という気持ちが強かった。
だが、私が体調を崩している間にも、彼はちょくちょく心配して連絡をくれたり、何かと気遣ってくれていたのだが、当時の私には、電話に出る気力も無く、ましてや会って話をする気力など全くなかったので、彼からの電話は無視するわ、メールで断るわで、彼のことはちょっとひっかかっていたのだ。
そのうち、私の体調もずいぶんよくなり、そんな頃、タイミングよく彼から連絡があった。ゴルフを始めたと言う。彼は、私がゴルフをしているのを知っていて、練習へ行こうと誘ってくれた。すぐに話は決まり、一緒に練習場へ行くことになった。
彼は、失恋するとヘロヘロになるが、日本一になったことのある元トップアスリートだ。いくら初心者とは言え、ゴルフのスイングも凡人とは違うんじゃないか、と、私はワクワクしていた。ところが、そのデカイ体からは想像もつかないくらい、小さな小さなスイングで、「どう?」と聞かれても、私には「せせこましいスイングだな」としか言いようがなかった。私のフォームの方がよっぽど男らしかった。
そんなこんなな一回目の練習を終え、「また行こう」という話になり、彼にとってはクリスマスイブとかそんなことはまったく関係なく、「今度の土曜日に」ということで、24日にまた練習場へ行くことになった。
私は、“あぁ、ちょうどクリスマスイブだし、今までいろいろ気遣ってくれたお礼に軽いプレゼントでも渡そうか”と思いついた。そして、いろいろ考えた挙句、ゴルフ用品にたどり着いた。彼は、一回目の練習の時殆ど道具を持っていなかったのだが、23日に立派な中古クラブが手に入ると言っていたので、それじゃぁ、消耗品でいくつあっても困らない小物をプレゼントしたらちょうどいいだろう、と私は思ったのだ。
24日当日、彼の道具は想像をはるかに越えた立派なものだった。
特注のキャディーバックにピカピカのフルセット。おまけに箱で新品のボールもたくさん貰ったという。“えっ、ボールをたくさん箱で貰った・・?。”
彼が連れて行ってくれた練習場は、とても家庭的な雰囲気のこじんまりしたところだったので、私は何の気兼ねもなく400球をぶっ放した。そしてその後、積もる話をしながら昼食を取り、満腹になったので席を立ち、ゴルフ用品店に向かった。彼は専門店に来るのも初めてだといろいろ眺めた挙句、ティーが欲しいと言うので、私は300円で5本くらい入っているのを薦めた。だが、彼は結局、その店で一番安いであろう78円のティーを買って店を出た。
そして、ついでにその隣の洋服売り場ものぞいてみることにした。
彼は靴下を手に取りつつ、自分が履いている靴下を指し、「黒い靴下っておっさんっぽい」と言って、ふわふわした生地の可愛らしい靴下を手に取ったが、女性物なので、結局買わなかった。“え?黒い靴下はおっさんぽいのか・・?。”
それから、スポーツ用品のブランドの話になった。私のゴルフ用品はナイキでそろえていることもあり、「ナイキってどう?」と聞くと「う〜ん、あまり靴以外は好きじゃない」という答えが返ってきた。“え?ナイキ好きじゃないんだ・・・。”
ここまで来て私はガックリしてしまった。
もうおわかりかと思うが、私が買ったプレゼントは、ナイキのボール3個にナイキの黒い靴下だったのである。
まさか、新品のボールを箱でたくさんもらってくるとは思わなかったし、ナイキがあまり好きじゃなくて、黒い靴下をおっさんぽいと思ってるなんて、私は全然知らなかったのだ。こんなことなら300円のティーを一つプレゼントした方が、よっぽど喜ばれたんじゃなかろうか。
しかしもうどうしようもない。
別れ際、ヤケのやんぱちで「はい、コレ。絶対今開けないで!」と言って手渡した。
彼はそのナイキの袋を見て、「あっ」といい、触った感触でボールの存在を知って、また「あっ」と言い、その後、靴下を触って最後の「あっ」を言った・・。
私は、「絶対今見るなっ!」と叫びながら逃げるように去った。
プレゼントを贈って、これほど滑っているのを事前に知ってしまったのは初めてだ。
神様は意地悪だ。善意を示した私にこんな打撃を食らわせなくてもいいだろうに。。
しかし、本当に人を喜ばせるというのは、とても難しい事なのだとつくづく思い知らされた。
だが、落ち着いた今、あの時私が動揺を隠して、堂々と彼にプレゼントを渡し、「今ここで開けてみて☆」と言って、彼の反応をじっくり見ればよかったと後悔している。喜ばせるのが無理なら、どんな困った反応を示すのか、それを見るのも楽しいではないか。
それがサンタさんからのプレゼントだったとしたら、私、貰い損ねちゃった。。
裏目裏目の私に
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